彼岸花の中からこちらを見つめるイナゴ。彼岸花とイナゴ。どちらも秋の風物詩ですね。秋も好きな季節ではありますが、夏大好きな私としては、この時期は夏の終わりを感じて寂しい気持ちになります。

研究を辞めるきっかけになった出来事

私が現役の研究者だった頃、他の研究者さん達と同様に、アカデミックポストへの着任を目指して公募に応募する毎日を送っていました。

そして、ある大学での公募で落ちた時、研究者として生きていこうとする私を支えていた何かがポッキリ折れてしまいました。

当時、私の職場と夫の職場が離れていたため、夫は一人で暮らし、私は2人の子供と3人で暮らしていました。

研究者として身を立てることと同じぐらい、いや、それよりももっと、家族みんなで暮らすことを望んでいた私は、夫の自宅から通勤可能な研究機関の公募に照準を絞って就職活動を行っていました。

学生時代の恩師からは

「場所限定して就活しても仕事なんて見つからないぞ〜」

などと言われており、実際、仕事を見つけることはできませんでした。

どうしても勝ち取りたい公募が出た

そんなある日、研究分野が私の分野とドンピシャで合致するだけでなく、夫の自宅から通勤圏内に位置する機関から公募が出ました。

自分の研究分野と募集元の研究内容が合致することも、望む場所にその施設があることも、どちらも滅多にないことです。

その両方を満たす公募が出たのですから、私は全身全霊をかけて応募書類を準備しました。

実験などしている場合ではありません。

論文を書いている場合でもありません。

ただひたすら応募先について調べ、求められると思われる人物が書くであろう書類を作成し、応募しました。

書類審査に通った

書類を郵送してからしばらくした頃、面接にきてほしい、とのメールを受け取りました。

私ともう1人、計2人の候補者が面接に呼ばれており、そのどちらを採用するか面接で決める、とのことでした。

前述の通り、何としても勝ち取りたいポストだったので、

学生時代のボス、研究者時代のボス、先輩、同僚、学生さん、頼れる人全員に頼り、プレゼンを見てもらい、アドバイスをもらい、面接に臨みました。

私が心血を注いで準備している様子が、もしくは、テンパっている様子が周りにだだ漏れだったのでしょう。

研究室の秘書さんが、研究室の研究費でパワーポイント操作機能付きのポインターを買って下さいました。

ある日突然私の席に来て、

「こういうの使った方がプレゼンキマるんじゃない?」

と笑顔でポインターを差し出してくれた秘書さん、本当にありがとうございました。

研究室を離れて長い時間が経った今でも、あの日のことを思い出すと心が温かくなります。

あれ?採用されちゃうんじゃね?と思わせる面接だった

面接当日、私は初めてその大学を訪れました。

建物からの景色も良く、校舎も歴史と趣を感じさせる大変素敵な建物で、到着した時から、ここで働けたら良いな、と思っていました
(どこに面接に呼ばれても思ったでしょうがw)。

面接は、自分では大変上手くいったと感じました。

準備に相当な時間と労力をかけただけあって、プレゼンも会心の出来で、研究成果を発表した時には、質問もたくさんいただき、興味を持っていただけた様子でした。

面接終了後、採用の担当であろう、面接官のお一人であった先生(女性)が、外まで送りがてら校舎を案内する、と仰って下さいました。

案内していただきながら、大学の生徒達はどんなことに興味を持っているのか、どういうことに気をつけて教育活動を実施しているか、など、着任後に重要になるであろうお話を色々聞かせて下さいました

そして、別れ際、

「次に会った時には一緒に飲みに行きましょうね」

と仰ったのです。

今思えば、ただ単に同じ業界で頑張る女性同士、ということで感じ良く接して下さっただけかもしれません。

でも、当時の私は、

あれ?次があるの? これ、採用されるんじゃないの??

と、期待 Max になってしまいました。

だがしかし。。。

採用されなかった

貴女を採用しません

と書かれたお手紙が、面接から1月以上経った頃届きました。

採用されなかったことは仕方がない。心ではわかっている。

でも、勝手に期待 Max になっていた私には、

不採用の事実がかなり心に重くのしかかりました。

不採用通知を受け取った直後に、一緒に飲みに行こうと仰って下さった先生から大変丁寧なメールをいただきました。

面接官の間でも、私の研究に対する真摯な態度が非常に高評価だったこと、

私が採用されれば、女学生の良いロールモデルになったであろうこと、

できれば私と一緒に楽しく学生を指導したかった、

これにめげずに就活を頑張ってほしい、

と言ったことが書かれていました。

ハァ〜!?何言ってんですか!!期待させるだけさせといて!!

どんだけ褒めてもらったとしても、不採用ですからね。今更何言われてもねー。

そんなに良いなら採用してくださいよ、てやんでい!!

このメールを読んでも、私の心が浮上することはありませんでした。

ていうか、むしろ落ち込みました。

先輩たちは、

「きっとその先生はあなたを採用したいと思ったから飲みに行こうって言ったんだよ」

などと言って慰めてくれました。

もしかしたらそうかもしれないな、就職は水物だしね。次に進もう! と心を切り替えようとしていた頃、、、

友達から衝撃的な話を聞きました。

出来公募だった

出来公募:あらかじめ採用者が決まっている公募。当時の(今も?)公募はほとんど出来公募だった。

この公募で採用されたのは、募集がかかった研究室の教授(飲みに行こうと誘ってくれた先生とは別の方)と同じ研究室出身の研究者で、

内々には、誰を採用するか話が付いていた

というのです!!

いやー、あたしゃ完全に当て馬ですよ。

公募らしくするためにはもう1人候補者呼んどいた方が良いよね?

男女共同参画とか言われてるし、女性が良いんじゃね?じゃあ、こいつ呼んでみっか。

ってなもんでしょうか。

「次は一緒に飲みに行こう」

じゃなくて、

「今日は無駄に呼んじゃってごめんね」

って言うべき場面だったんじゃないかしら??

むしろ交通費出してほしいわ。

常日頃思っていた、

出来公募の場合は、募集要項に募集側と応募側にしかわからないような、業界共通のそれらしいサインを忍ばせておいてくれれば良いのに

ということを、この時ほど強く思ったことはありませんでした。

業界から離れた今、冷静に考えてみると、

一生懸命準備して面接に行ったけど出来レースだった

なんて出来事は、周りのポストを求めて頑張っていた研究者もみなさん経験をされていて、

言ってみれば、まぁそんなこともあるよね、って程度のことのようにも思えます。

でも、当時の私の心はポッキリ折れてしまい、この時を境に就活に割く時間とエネルギーが徐々に減っていきました。

そして、長子が小学校へ進学するタイミングで、私は研究室を離れ、夫の住む土地に引っ越したのでした。

採用側のみなさまにおかれましては、採用しない(可能性のある)応募者に対しては、不採用発覚時のダメージ軽減のために、是非、

必要以上にもてなさず、事務的に接していただけますと幸いです。

リケ女2号の私見に満ちたひとりごと

当時は(おそらく今も)出来公募が横行していて、後ろ盾のない研究者はみんな同じような辛い目に、頻繁に遭っていました。

いかに買い手市場か、ということがうかがわれます。

リケ女1号も書いていましたが、公募に応募する際には、多くの時間と労力を消費します。

研究する時間も、論文を書く時間も削って準備するのです。

ということは、出来公募でアカポスに就いた研究者は、そうでない研究者よりも多くの時間を研究や論文執筆に費やすことが出来たはずで、

研究者として様々な経験を積んで成長する上でも、業績を増やす上でも、かなり有利な立場にあると言えるでしょう。

となれば、出来公募で採用者が決まることの多い日本では、より優秀で業績の優れた研究者が集まって、研究機関の研究能力や競争力は、どんどん高くなっていくはずです。

でも、現状、日本の研究機関の研究能力・競争能力はどんどん衰退してきています

コネで採用された研究者が外部資金を獲得することもできず、研究がまともに続けられる状況ではなくなっている、なんて話も良く耳にします。

まぁ、研究者としての人生を諦めた私が書くと負け惜しみっぽくなっちゃいますが、

やっぱり、研究業界のように従事者に相応の実力が求められる世界では、

競争システムが正常に働かないとダメだよな

と思います。

競争に負けてしまうような人材が、コネで採用され、先生をやってるような大学には、子供を通わせたいとは思いませんしね。

研究機関の研究力・競争力を損なわないためにも、

また、この少子化の時代に消費者(学生)に選ばれるためにも、

出来公募は実施されない方が望ましいでしょう。

その研究機関のためにも、大学に通う学生のためにも、頑張る若手研究者のためにも、ひいては日本のためにも、出来公募は百害あって一利なしだと思っています。

 


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