生物の研究は色々な方法で行われますが、中には「えっ!?」と驚くような方法もあります。
今回は、私がこれまでの研究者人生の中で見聞きした様々な研究方法の中で、最も衝撃を受け、折にふれて思い出してしまうヘビの研究方法を紹介します。
ヘビの胃内容物調査
私には、大学で爬虫類の研究をしている知人がいます。
その知人は当時、研究の一端として、ヘビの食性(何を食べているのか)を調べていました。
野生個体についての研究だったので、調査時には山に入り、ヘビを片っ端から捕まえます。
そして、捕まえたヘビの尾から頭に向けて、ムニ ムニ ムニ ムニ、と圧迫していき、口から胃内容物を吐き出させます。
筒の紙を破らずにメントスを取り出す、または、残り少ないワサビをチューブから搾り出すイメージです。
そして、吐き出した胃内容物にどんな生物が含まれるのかを調べます。
知人が研究対象とするヘビでは、上記の方法で、10個体以上のカエルが出てくることもあるそうです。
調査が終わったヘビは山に帰されるので、この調査によるヘビ個体群へのダメージはあまりないと予想されます。
でも、ヘビの捕食対象であるカエル個体群にとってはダメージになりかねません。
例えば、10個体のヘビを捕まえて、その10個体が各々10個体のカエルを食べていた場合、調査対象のヘビ達によって、最近、合計100個体のカエルが捕食されたということになります。
せっかく100個体のカエルのおかげでヘビ達はお腹が満たされていたのに、ヘビ研究者の手によって胃内容物を吐き出さされてしまうと、空腹になってしまいます。
すると当然、お腹が空いたヘビはまた食事をとるので、さらに100個体のカエルが捕食されます。
つまり、調査を実施したせいで、100個体のカエルの尊い命が余分に失われてしまうのです。
1回の調査でカエル100個体の犠牲は、カエルの個体群には大ダメージです。
研究によって生態系に与えるダメージは最小限にしなければなりません。
そこで、カエル個体群に与える影響をより少なくするために、なんと、
ヘビが吐き出した胃内容物を、調査が終了したら胃の中に戻す
というのです!
おそロシア!!
胃内容物を吐かせた時とは反対に、口から入れ、尾に向かってムニ ムニ ムニ ムニと入れていくのだそうです。
私はこの話に強い衝撃を受け、この話を聞いて以来、二日酔いがひどい時やつわりがひどかった時、食べ物にあたって体調が悪い時などに、この話が頭をよぎり、
「吐いたものを食べさせられるなんて辛いだろうな~」
としみじみ思うようになってしまいました(汚い話でごめんなさい)。
いやー、色んな研究方法がありますね☆
なお、私には、この研究方法について否定的な感情は全くありません。
否定的に思うどころか、胃内容物を胃に戻すのはかなりの手間だと思いますので、野外調査という時間の限られた中で、毎回それを実行している知人には研究者としての非常に高いモラルを感じ、尊敬の念をおぼえます。
ただただ、私は1度吐いたものはお腹に入れたくない、というお話です。
おまけ:ジムグリの鳴き声と威嚇臭
先日家族で山歩きをした時に、「ジムグリ」というヘビに出会いました。
見たことの無いヘビだな、と思ったら、土に潜っていることが多く、あまり見かけない種類だそうです。
毒のないおとなしいヘビで、歯が短いため、噛まれても大きな怪我はしないとのこと。お腹の模様が特徴です。
捕まえると、鳴いて、おそらく威嚇のために、匂いを発しました。
鳴き声は、キューキュー、ピーピーといったような甲高い声でした。
匂いは、カビ臭いような、深い森の木の根元のような匂いでした。
ヘビと出会って大喜びの息子は、ヘビに猪突猛進してむんずと捕まえていたため、手がもの凄く臭くなり、沢の水で洗っても匂いは落ちず、しばらくヘビ臭を漂わせていました。
息子はジムグリを家で飼いたそうにしていたのですが、持ち帰るのに適した容器が無い上に、夏場はクーラーを効かせた部屋でないと飼えないそうなので、持ち帰りは断念しました。
それにしても、全く躊躇することなくヘビに掴みかかる息子は、頼もしいとも思う反面、危険察知能力が備わっていないのでは?と心配です。
野生生物の危険性を懇々と説明し、さわって良い生き物とさわってはいけない生き物の判断がつくようになるまでは、親が「さわって良いよ」と言ったもの以外さわらないことを約束してもらいました。
【捕まえた蛇は洗濯ネットで持ち帰りましょう↓】