水族館で出会ったソバージュネコメガエル。あまりにも酷いアカハラ被害にあった時の私のような、ニヒルなお顔です。

ブラックラボでのアカハラ

私が大学の研究室に在籍していた頃には、多くの研究室で、程度の差こそあれ、アカハラ・パワハラ・セクハラが日常的に行われおり、私も度々被害にあいました。

今回は、その中でも私にとって一番影響の大きかったアカハラについてのお話です。

君の給料は出せて2万円だな

と、ボスが言ったのは、ある昼下がりのこと…

この1年ほど前、研究内容をまとめた論文を投稿しようとしている私に、共同研究者である他大学の某教授がイキナリ、

「こちらのチームの論文が出る前にそちらのチームの論文出すのおかしいでしょ。」

と言い出しました。

私の論文は完成してるし、これがないと博士審査は受けられません。

「そんなこと言われる筋合いは無いけどね。まぁ、しょうがないか。」

と、うちのボス。

いやいやいやいやいやいやいや、ちょっと待って下さいよ!

ボスは、こちらの研究は某教授の研究に十分配慮した形で進めてるので本来なら全く問題ない。でもまぁ、あちらさんが機嫌損ねちゃったんならしょうがないね、ちょっと我慢して。

と、話し合うつもりも、こちらの論文投稿を交渉するつもりも全く無いのです。

もの凄くいやらしい物言いをしますが、先方よりうちのボスがはるかに格上で、理不尽な要求を甘んじて受け入れなければならない理由はどこにもありませんでした。

「そうかな?ちゃんと配慮してるし、問題ないでしょ?」

と一言伝えてもらえれば済む話だったと思います。

繰り返しになりますが、私の論文は完成しているし、その論文が受理されないと私は博士審査が受けられません。

件の論文は私の博士研究の主用論文なので、他の論文で代用する訳にもいきません。

そして、先方の論文が出るまで私が論文を投稿してはいけない理由はありません。

つまり、全くいわれのないイチャモンによって、その年の卒業を諦めさせられようとしていたのです。

その状況で、まぁしょうがないよね~と、なんでもないことのように論文を投稿するなと指示するボス。

常々、先生たちは横のつながりは大事にしてるけど、学生やポス毒なんて安く使える小間使い程度に考えているんだろうな、と思っていたけど、この時ほどそれを強く感じたことはありませんでした。

いや、まぁ、この後も何回も感じましたけどね…

そこで私は交渉しました。

1年の留年は我慢するけれど、留年中の学費を自分で払うことは我慢ならん。留年中の1年間は正規の研究員に準じた立場として研究室において欲しい。月20万円程度の給料を支払って欲しい。と。

「そうだね、そのぐらいは当然だと私も思っているよ。ちゃんと20万円の給料も出すよ。」

ボスは了承した。約束した。なのに、翌年からの待遇を話し合う席で冒頭の一言ですよ。

はい、もう一度。

君の給料は出せて2万円だな

目ん玉がビヨヨヨヨヨ~ンって、どっかに飛んでいくかと思うほどビックリしました。

ビックリするほどボスの甘言を信じていたなんて、当時の私もまだまだ青かった。

ボスは、「無い袖は触れからねー」と、申し訳無さそうな様子は一切ありませんでした。

こうして私の月収は2万円に決定しました。

生活が成り立たないため週2日でバイトを始めた私にボスが、

「研究する時間が無くなるじゃないか、一体どう思ってるんだ?」

とのたまった時に「あなたはどうお考えですか?」と返答出来なかったことは今でも心残りでなりません。

なお、私の留年が決定した後、先方チームの論文は待てど暮らせど出ませんでした。論文書く人がいないんだってさ。なんじゃそりゃ。

先方の論文が出ないと私の論文が出せないのは確定だったので、私が彼らの成果をまとめ、論文を執筆し、投稿しました。

他人の名前

あほくさっ。

この件について、研究室の先輩方は一様に、

「まぁ気の毒だけどしょうがないね、そんなもんだよ」 といった反応でした。

実際周りを見渡すと、無給の人もたくさんいて、

「博士持ちじゃないのに2万ももらえて幸せじゃん」

って思う人がいたのも仕方ないのかもしれません。

私も含めて研究室のメンバーはみんな、研究室に在籍できるだけで幸せ、研究が続けられるだけで幸せ、って、マインドコントロールされちゃってたというか、集団催眠状態だったのかもしれません、今思えば…

なお、この件では、先方のクレームの付け方にも違和感を覚えました。

お怒りメールは全て私個人宛に来ました。CCにボスが入っていることも無く。

お前には研究者としての倫理が著しく欠如している、研究者としての良識を疑う、という強い言葉が、指導教員であるボスにではなく、一学生の私個人に来るのです。

うちのボスが、研究室のメンバー全ての研究にきっちり目を光らせ、事細かに指示を出すことは業界では有名な話で、先方もそれは良く知っていました。

だから、研究の進め方や、どんな論文を書くか、論文をいつ投稿するか、などは全てボスの指示に従って進めていることは分かっていたと思います。

その後、

「大人気なかった、申し訳ありませんでした」

と、ボス宛にお詫びがあったけど、私には一言もありませんでした。

本当に申し訳ないと思うなら、留年分の学費払って下さいよ、てやんでい。

文句は立場の弱い人間に、ご機嫌伺いは立場の強い人間に。

立場の弱い人間はひたすら搾取され続ける。そんな世界。

今思い返すと本当に不思議。どうしてこんな理不尽に耐えていたのか…


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