お散歩中に出会ったアカイカタケ。直径10cm程度。イソギンチャクじゃなくてキノコです。「幻のキノコ」と呼ばれる程珍しいもので、私も初めて出会いました。臭いで生き物をおびき寄せるとのことで、動物の排泄物のような強烈な臭いでした。生物にもいろんな生き方があるように、私だって、自分が望む生き方をして良いのです。

研究を辞めたら怒られた話

私は30代後半で大学のポス毒を辞め、民間企業に転職しました。

転職した時の周囲(研究業界)の反応は、

    • え?びっくり😳!
    • なんで辞めちゃったの😒?
    • 就職できて良かったね😆!
    • けしからん😤💢!

と、好意的な反応も否定的な反応もありました。

そんな中でも特に印象深かった、現役の頃は全く関わりがなく、引退後初めて話した大御所の先生に、研究を辞めるなんて全くけしからん!と苦言を頂いたエピソードを紹介します。

民間企業に転職して数ヶ月が経った頃、某大御所の先生から一通のメールが届きました。

直接研究で関わったことはありませんでしたが、業界内では知らない人のいない著名な先生で、私もご高名は存じ上げておりました。

曰く、執筆中の著書に私の研究成果を引用したいので図表など貸して欲しい、とのこと。

自分の研究成果について著書の中でふれて頂けるのはとても嬉しいことだったので、こちらこそ是非お願いします、と、図表と共に返信しました。

メールを送付したところ、わざわざお電話を下さいました。

引用を快諾したこと、図表を送付したことに対して丁寧にお礼を言って下さり、やっぱり大御所はちがうな~なんて思っていたのですが、、、

ところがどすこい!

「しかしあなたねぇ、研究を辞めるなんてけしからんよ、いや~けしからん!!」

とのたまうではありませんか!!

「学会賞までとった人が辞めるなんて、そんな訳に行かないでしょう」

「ポストなんていくらでもあるでしょう」

と、出るわ出るわ、研究を辞めた私がどれほど “けしからん” かを熱弁するのです。

けしからんのはあなたの方ですよ!!

とは言いませんでしたが、この先生は、昨今の博士の就業問題をご存知無いのね、と、ひじょ~~~~に冷めた気持ちになりました。

今思えば、昨今の事情を理解しているとかいないとかではなく、研究とは生活を犠牲にしてでも続けるべき物である、と心の底から思い、ご自身もそのように研究者としての人生を歩んできた、という背景から出た言葉だったのかもしれません。

でもね、散々苦しんだ私としては、ちょっと待って下さいよーと思うのです。

当時の(おそらく今も)ポス毒の就業状況は本当に厳しかったのです

公募されるポストの数が着任を希望する博士の数よりはるかに少なく、コネ採用が当たり前の世界。

門下生の就職について一切口を利かないボスの下じゃ、優秀な男性研究者でも就職が難しく、妊娠・出産によってペースダウンを余儀なくされる子持ち女性研究者の就職は一層難しい。

男性と同じようには時間を使えないから、男性と同等に努力しているのでは全く足りない。

育児しながらだと命を削らないと研究に当てる時間が十分には捻出できないけど、努力しても命削っても、運が味方してくれないとダメ。

ポストなんていくらでもあるって、え?何処に?紹介して下さいってなもんですよ。

例えば、夫に専業主夫になってもらうとか、ベビーシッターさんを探すとか、そういった、妊娠・出産によってペースダウンしない努力をしなかった私に非が有る、と言われれば、そうなのかもしれません。

でも、ポス毒の不安定な給料ではそんな選択肢はありませんでした。

今となれば、当時の私にはそもそも、自分が家庭の外貨獲得の主担当になる、って覚悟が無かったな、とは思います。

そんなつもりは無かったけど、心の底では、「妻が家庭を守る、夫が生活費を稼ぐ」というイメージが出来上がっていたのかもしれません。

私もまだまだ青かった。。。

おぉ!!今書きながら気付きました。

ひょっとして、研究が一番大切、と考えている人から見れば妊娠や出産に現を抜かすなんてけしからん!! ってことなのかしら??

いや、そうとまでは思って無くても、研究ができなくなるなら子供を持つ資格なし、ぐらいは思っているかもしれない。。。そうかもしれない。。。きっとそうだ。。。

そうにちがいない😱

⬆️私の超個人的な見解です

なるほど。目から鱗がポロポロこぼれますな。

子供を持つのがけしからんのなら、けしからなくて結構ってなもんですよ、てやんでい!

まぁたしかにね~、研究業界って成果出してなんぼの世界だから、生き残りたいなら研究に集中しなさいよ、って意見があるのもある程度理解できるんですよね。

私も一生懸命やってた分、なおさら理解できます。

だがしかし。無責任なお説教は No thank youです

辞めるなと言うなら、
「僕が子供の面倒見るからその間に頑張って」
「給料出すからうちの研究室にいらっしゃい」

って言うぐらいの覚悟の上で言って欲しいのです。

道半ばで研究者としての人生を諦める、もしくは見切りをつける若手博士と(研究業界では 30代はまだまだ若手です)、博士の就業問題に向き合わない業界とその業界を牛耳る大御所の先生。

いったいどっちが  “けしからん” のでしょう?

もし、研究者として大成して権力をお持ちの先生方が、若手が研究を辞めるのが惜しいと思うのであれば、研究を辞める人間に対して “けしからん” と思うのではなく、若手が研究を継続できる状況をどうやって作るのか、ということに少しでも目を向けて下さると良いな、と思います。

なお、その後私の研究成果を引用していただいた御著書は無事出版されました。

出版前にチェックして、と原稿が送られてきましたが、そこでまたビックリ。

まず、私の名前が間違っている。

この大先生、私の後輩が先生のお名前を間違えて御本人宛にメールを送付した時、烈火のごとく怒り、私達のボスが頭を下げる事態に発展したのは記憶に新しい。

「人様の名前を間違えるなんて、もっとも失礼で決してしてはならない行為だ」

といった内容のメールが後輩に届いてたけど、人に言えた立場じゃないですね。

それから、図に対する本文が全くの的外れ。

え?そんな実験してないし、この図表はそんな結果示してませんよ??ってなもんです。

図と原稿の不一致点をお伝えする ⇒ ちょっと的外れ度合いの減少した原稿が贈られてくる

の繰り返しで、図と本文の内容が一致するまで、何回もメールのやり取りが必要でした。

私の説明が悪かったんじゃないか?と思われるかもしれませんが、全くそうは思えない、すがすがしいほどの的外れ度合いでした。

いや~、まったく。これも合わせて “けしからん” ですが、

まぁ研究者って大体こんな感じだよな、このぐらいの人じゃないと研究業界では大成しないのかもな、

とも思ってしまうリケ女2号なのでした。

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